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***”まさみ”の裏道散歩」***

Name : まさみ
Sex  : ♀ (写真は京都に住んでいた頃。けっしてではありませんョ!)
Birth : Jun 19XX
Nationality : FarEast
Occupation : もの書き??

”アルバイト”より@
 私は以前、街頭でチラシやポケットティッシュを配るアルバイトをしていた。
ひたすら配るだけだから仕事の面白みは皆無に等しいけれど、実にたくさんの人間を見ることができた。それも赤の他人の、通りすぎる一瞬の姿を。
 朝の駅前。通勤時間。ティッシュを配っていた。実用品なのでたいていの人がもらってくれる。が、人によってムラがある。ただティッシュをもらうという行為にも、個人差がある。
 電車の発車時刻に合わせて出勤、登校の皆様が押し寄せる。どっと押し寄せ、ふっと途切れる。その間の時間帯はチラホラ。そのふっと途切れた時間、次の波に備えてティッシュを用意しているところへ、一人の男性が走ってくる。駅を目指して真っすぐに。ちょっと寝坊したというところだろうか。私は少し迷った。走っている人は、いくら使えるティッシュでも、あまり受け取らないからだ。しかし彼は「ちらり」とこちらを見たのだ。「よしきた!」と、ティッシュを構える。彼は走って来る。ティッシュの端を軽〜く持って、腰の位置へチョイと差し出した。そこへスーツの彼の腕が伸び、・・・通りすぎた。ティッシュはしっかりと彼の手に握られた。スピードを少しも落とすことなく受け取って、彼は駅へと走り去って行った。完璧なバトンタッチであった。私は晴々とした心で駅を見上げた。
 ポケットティッシュなど、クソ忙しい時にどうしても受け取らねばならないモノではない。また上手くティッシュが取れたからといって、どういうことでもない。しかし、どこの誰とも存ぜぬ人と、その一瞬、確かに心が通じ合う。私は信じたい。息を切らして電車に乗ったその人も、手の中のティッシュを見て、爽快な気分になっていることを。
 ”完璧なバトンタッチ”は一回のバイトで一度くらい達成される。その度に私は、こんなチッポケなことで幸せになれる自分をなんと美しいのだろうと思う。
 PS:バトンタッチに失敗した場合、けっこう恥ずかしく、”微妙に落ち込む”ことを覚悟されたし・・・。
                       

                    ”アルバイト”より

 梅雨のお手本みたいな連日の雨。人の気分というものはわりと天気に影響されやすいものらしい。私は雨の日、とくに長く降り続く雨の日はどうも感傷的な気分になる。ちょっとのことで泣きたいような気分になる。今、去年の梅雨を思い出し、久しぶりにバイトの話をしよう。
 雨の日の配布はつらい。少々の雨では中止にもならず傘を持って配らなけりゃならない。アーケード街なら幸運だが、屋根を確保できないときはしかたない。傘を片手に配るのは難しい。ただでさえ雨の日はさばきにくい。みんな傘を持っているからだ。手がふさがっていてはもらってくれない。誰でも雨はうっとおしい。仕事で疲れていればなおさらだ。いらいらしているときに欲しくもないティッシュを差し出されその上傘で通行を邪魔されては腹もたつというもの。舌打ちしながらあからさまにぶつかっていく人がいる。私ははずみでティッシュを落とす。濡れた道にぶちまけたティッシュを、通行人の足を縫って拾う。涙がでそう。
 よっぽどティッシュが欲しかったのか、よっぽど心が優しいのか、わざわざ傘を反対の手に持ち替えてもらってくれる人がいる。涙がでそう。
 せっかくもらってくれるのにティッシュの袋が濡れていては悪い。ついた雨滴を袖で拭っては渡す。拭っては渡す。我ながらいじらしくて、涙がでそう。
 新宿池袋あたりには、天気に関わらずうろうろしているおじいさんやおばあさんがいる。そんな一人のおばあさんが私に近づいてきて大きな袋を差し出した。
「これいっぱいにティッシュを頂戴」喜んでっ、といいたいところだが、さすがにまずいと一応こらえて十個ほど渡した。どーもと言っておばあさんは雨の中歩き去る。おそらく次のティッシュを求めて。
 いったいあれだけ大量のポケットティッシュをどうするのだろう。慢性鼻炎でもなさそうだし。もしや、と私は思う。もしやトイレットペーパーの代わり?ああ、考えただけでも涙がでそう。
 まあそんなわけで雨の日の配布はいろいろと涙を誘うのだ。だからというわけでもないが、梅雨が明ける前に私は配布のバイトを長期で休むことにした。
 ちなみに、普通のティッシュは水に溶けないのでトイレが詰まる恐れあり。

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 次回へ続く・・・

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